魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
これが遅れただけでヴェロニカの前から連れ出され、地下牢行きとなった配下の姿を神殿長は覚えている。そして翌日、その女は黒い染みだけを残してどこかへと消えた。
自分がその二の舞になるのだけはなんとしても避けねばと、ぴたりとその姿勢のまま動かなくなった神殿長の姿を鼻で笑い、ヴェロニカは冷淡に告げた。
「情けないこと。自前の魔力で満足に治療もできない小物が精霊教会の治癒士を名乗ることすらおこがましいのだけれど……まあ、私は優しいから多めに見てあげるわ。今回だけ、神殿への寄付金で賄うことを許しましょう。民間から魔石を買い付け、霊杖の魔力への補填にあてなさい。それと、速やかな原因の究明も忘れぬように」
「……は、ははぁっ! 寛大なる御心、感謝いたします! 教会員たちも涙を流し感激することでしょう! では、すぐに手配を……」
「――神殿長」
立ち上がり、深く一礼した後、すぐに退出しようとした神殿長をヴェロニカは呼び止めた。真っ赤な唇が、囁くような声を紡ぐ。
「最近、少しばかりつまらない報告が多いんじゃなくて? そろそろ、私の喜ぶような話が聞きたいものだけど、次の機会には、期待してもいいのかしら?」
自分がその二の舞になるのだけはなんとしても避けねばと、ぴたりとその姿勢のまま動かなくなった神殿長の姿を鼻で笑い、ヴェロニカは冷淡に告げた。
「情けないこと。自前の魔力で満足に治療もできない小物が精霊教会の治癒士を名乗ることすらおこがましいのだけれど……まあ、私は優しいから多めに見てあげるわ。今回だけ、神殿への寄付金で賄うことを許しましょう。民間から魔石を買い付け、霊杖の魔力への補填にあてなさい。それと、速やかな原因の究明も忘れぬように」
「……は、ははぁっ! 寛大なる御心、感謝いたします! 教会員たちも涙を流し感激することでしょう! では、すぐに手配を……」
「――神殿長」
立ち上がり、深く一礼した後、すぐに退出しようとした神殿長をヴェロニカは呼び止めた。真っ赤な唇が、囁くような声を紡ぐ。
「最近、少しばかりつまらない報告が多いんじゃなくて? そろそろ、私の喜ぶような話が聞きたいものだけど、次の機会には、期待してもいいのかしら?」