魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
(呪いが解かれた影響が出始めたか。あの場所を通して各地からこちらに送られてくる闇の力が、減じ始めているのね。ふふ……それがまさか教会で扱う癒しの魔道具の力に転用されているなど、やつらも思いつかないのでしょうけど……クククッ)

 元々は、ボースウィン領から失われた闇の力を補填するつもりで仕掛けた今回の呪い。それを回収し、かつ今度こそシルウィーを始末する。もしくは彼女を捕え、ボースウィン領でどうやって呪いを解除したのか解析する。それが当時リュドベルク城を訪れていたヴェロニカの目的だった。

 呪いの種を作るには、幾万もの人間の血涙を伴うような苦痛と、死への恐怖が必要となる。リュドベルク公の娘に種を植え付け、災厄に孵化させるところまでは上手く行った。あのままそれが、領地を包み込んで相当数の人間を屠ってくれれば、彼らの恨みは大地へと染み入り、いずれそれらを回収したヴェロニカはまた再び大きな力を溜め込むことができたはず……。

 だが、そうはならなかった。

「ここまでいくと、もはや気持ち悪いわね。いつも虫みたいにしぶとく生き延びて……」

 新たな力に目覚めたシルウィーと、リュドベルク公爵家の次男坊が結託し、もはや絶望的かと思われる妹の救出へと向かったまでは、ただの茶番に思えていた。だがまさか……リュドベルク家の娘が深い心の奥に作った壁を突破し、現実に連れ戻してくるなど……。兄の方がああまでしてヴェロニカの誘いに抗ったのも、計算外だった。
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