魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 そういえば、復活したかのように思えたあの魔力は、数日たった今では幻のように消えてしまった。今の私は彼の言う通り母の血を継いだだけの、言ってしまえば役立たずの無駄飯食らいだ。

 不遇さは感じていても、刻々と呪いに身を蝕まれようとしている彼の不運とは比較するのも申し訳なく、私は口を噤む。
 それきり無言が続き――沈黙を嫌ったのかスレイバート様は立ち上がるとこちらに手を差し伸べた。

「よっと……そろそろ行くか。マントはそのまま貸しといてやるよ、どうせ、お前がしがみ付いてりゃ背中は温かいし」
「ど、どうも……」

 その気遣いに感謝を述べ彼の手を取ると、私の身体がぐっと引き寄せられる。
 そして、彼は近づいた私の耳元に口を寄せ囁いた。

「興味を持ってくれたようだから言っとくが……ちなみに俺はお前の第一印象、嫌いじゃないぜ。母親みたいに派手な美人じゃないが、どっか温かいとこが顔にも出てる。仲良くできるといいな」
「――――ひっ」

 先程までの真面目な話との落差が、私の顔が真っ赤に染め……彼の明け透けな笑いが草原に響く。
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