魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 純粋な魔力の大きさだけならば、帝国一の魔法士とも呼ばれたマルグリットをも凌ぐかもしれない逸材。それに、精霊の血を継ぐ四大公爵家の者たちの中でも、やつだけは直接精霊から産み落とされた、いわば特別製。他の者とは別格の器……。

 侮っていたリュドベルクの次男坊がヴェロニカを傷付けて見せたように、人の力というものは、底が知れない。あの男と正面から戦えば、いかに長年呪いの力を蓄えた自身であろうと、不覚を取る可能性がある。

 だからこそ、そのための――保険。

「……ねえ、そうでしょう? ディオニヒト様」

 ヴェロニカは腰を捻ると、身体ごと後ろに回して……そこにある白い背中を見つめた。ベッドの奥には、上裸をシーツから半ばだけ見せた美しい男性の姿がある。しかし、あれだけ騒いだにもかかわらず、彼は横倒しになったまま微動だにしない。その瞳は、虚空の一点を見つめていて……。

 ヴェロニカがしなやかな指をすっとその背中に這わせても、なんの反応もなく。明らかに皇太子の様子はおかしい。

「うふふ……あなたにも望みを果たさせてあげましょう。色々なものと引き換えに――ね」
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