魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
どうやら、彼女はこの街で魔法用品店を経営する傍ら、孤児院を開いている奇特な人物らしい。所在がある程度特定できた私たちは、色気たっぷりな妖艶な美女のイメージを想い浮かべながらも、馬車の停留所から街中へと歩いていく。
にしても、見るからに爽快な景色だ。冬場のボースウィン領の銀世界もそれはハッとするほど美しいものだけれど、こちらもまた壮大さでは負けてはいない。空と一体化するような青い大海原に、太陽光を照り返す白い家屋や砂浜。街を歩く人々も元気そうで、耳に届いてくるのは心を癒す、打ち寄せる波の音にのどかなカモメの鳴き声。ここでしばらく暮らすだけで健康になってしまいそうな、そんな雰囲気があった。
クリムゾンカラーの瞳一杯に海を映したラルフさんが、吸い込まれていきそうな、心ここにあらずの声色で呟く。
「すんげーなぁ……。こんだけ水があったらさ、喉が渇く心配もねーよなぁ」
「ダメですよ、海の水って、すごく塩の濃度が高くって、人間には毒らしいんです。日光に晒して乾かしたり、煮詰めたりして、製塩に使われるくらいですから」
噂で耳にしたが、このゲルシュトナー領は周りを囲む沿岸を利用し、塩づくりをして国内に広く流通させているんだとか。そういえば、ゲルシュトナー産の塩といったら料理なんかほとんどしない私なんかでも名前を聞いたことがあるくらいだ。
にしても、見るからに爽快な景色だ。冬場のボースウィン領の銀世界もそれはハッとするほど美しいものだけれど、こちらもまた壮大さでは負けてはいない。空と一体化するような青い大海原に、太陽光を照り返す白い家屋や砂浜。街を歩く人々も元気そうで、耳に届いてくるのは心を癒す、打ち寄せる波の音にのどかなカモメの鳴き声。ここでしばらく暮らすだけで健康になってしまいそうな、そんな雰囲気があった。
クリムゾンカラーの瞳一杯に海を映したラルフさんが、吸い込まれていきそうな、心ここにあらずの声色で呟く。
「すんげーなぁ……。こんだけ水があったらさ、喉が渇く心配もねーよなぁ」
「ダメですよ、海の水って、すごく塩の濃度が高くって、人間には毒らしいんです。日光に晒して乾かしたり、煮詰めたりして、製塩に使われるくらいですから」
噂で耳にしたが、このゲルシュトナー領は周りを囲む沿岸を利用し、塩づくりをして国内に広く流通させているんだとか。そういえば、ゲルシュトナー産の塩といったら料理なんかほとんどしない私なんかでも名前を聞いたことがあるくらいだ。