魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「あ~あ……そんで、昨日食った宿の料理がものすげえ塩っ辛かったのかなあ。んじゃあ、残念ながらオレはこっちには住めそーにねえな。まだ生ハムにはなりたくねえ」
「…………どうなんでしょうね」

 確かに、やや塩と砂糖の分量を間違えたような味付けだった気がしたけれど、それがゲルシュトナー風なのか宿のコックのミステイクだったのか確信が持てない私は、多くを語るのをやめておいた。

 それよりも……やはり新しい土地となると、目に入る刺激が違いすぎて、私の頭は情報を整理するのに忙しい。人々の着ている服や、住んでいる建物、店先に並ぶ品物に至るまで、知らないものたちで溢れている。油断すると、スレイバート様を探すという本来の目的が、頭の中からぽろりと零れ落ちてしまいそうに――……。

「んお……?」
「とりあえず、街の地図を買うか……それかどこかの喫茶店か何かで、メレーナさんについて尋ねてみましょうか。お店を開いているのなら、知っている人も多いはずで……っ!」
(静かに――!)
(んーっ……!?)
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