魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
ただちに路地裏を飛び出そうとした私の肩を抑え、ラルフさんが耳元で囁いた。慌て過ぎてよく見ていなかったが、確かに、その隣にはひとりの女性がいる。
背は私より少しばかり高いくらいだろうか。柔らかい茶色の髪をした、清楚で上品な若い女性。あれが、手紙の宛名にあったメレーナ・エルプセンという方なのだろうか。魔女というイメージには、ずいぶん遠く見えるが……。
一瞬、なにかを探すようにちらりと彼女の視線がこちらに向き、慌てて私は頭を引っ込めた。どうやら、気付かれた様子ではないようだけど……。
「とにかく……後をつけようぜ。くれぐれもシルウィー様、証拠を掴むまで、早まった真似はすんなよ」
「は……はい」
まさか――本当に女性と行動しているなんて。
ごそごそと木箱から降りた意気消沈気味の私を連れ、ラルフさんはスレイバート様の後を付けだす。どこでそんな尾行術を覚えたのか、一定の距離を空けつつ、彼は見事に建物の影や人混みに紛れてスレイバート様とメレーナさん(暫定)の観察を続けてゆく。
背は私より少しばかり高いくらいだろうか。柔らかい茶色の髪をした、清楚で上品な若い女性。あれが、手紙の宛名にあったメレーナ・エルプセンという方なのだろうか。魔女というイメージには、ずいぶん遠く見えるが……。
一瞬、なにかを探すようにちらりと彼女の視線がこちらに向き、慌てて私は頭を引っ込めた。どうやら、気付かれた様子ではないようだけど……。
「とにかく……後をつけようぜ。くれぐれもシルウィー様、証拠を掴むまで、早まった真似はすんなよ」
「は……はい」
まさか――本当に女性と行動しているなんて。
ごそごそと木箱から降りた意気消沈気味の私を連れ、ラルフさんはスレイバート様の後を付けだす。どこでそんな尾行術を覚えたのか、一定の距離を空けつつ、彼は見事に建物の影や人混みに紛れてスレイバート様とメレーナさん(暫定)の観察を続けてゆく。