魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「ごめんなさい。私やっぱり、これ以上は……」
「そ、そうだな……あのヤロー。さすがにもう十分だよな。ちょっと待ってな……おいあんたら、どいてくれっ――」
「あ……」
八重歯を剥き出し、瞳に決意を込めたラルフさんが止める間もなくずんずんと歩き出し、通行人たちを割るように進んで行った。踏み出す一歩は徐々に駆け足へと変わり、そして――。
「っらぁ、スレイバート! てめぇ、自分の女を放っといてなにやってやがんだ……ぶっ殺すぞ!」
「赤髪……!?」
ラルフさんの大振りの拳が、後ろからスレイバート様に迫る……!
さすがに驚いたのか、振り向いた彼の神秘的な双眸が一気に見開かれた。でも、その攻撃は当たる寸前で躱され――。
「きゃあぁぁっ、なんなんですかあなた! 誰かぁぁっ!」
隣の女性の大きな悲鳴で周りの視線が一斉にラルフさんへと向く。これはまずいと私は夢中で人混みに身体をねじ込み、「すみません、通してください!」と叫びながら、なんとか彼らのもとに辿り着く。
「そ、そうだな……あのヤロー。さすがにもう十分だよな。ちょっと待ってな……おいあんたら、どいてくれっ――」
「あ……」
八重歯を剥き出し、瞳に決意を込めたラルフさんが止める間もなくずんずんと歩き出し、通行人たちを割るように進んで行った。踏み出す一歩は徐々に駆け足へと変わり、そして――。
「っらぁ、スレイバート! てめぇ、自分の女を放っといてなにやってやがんだ……ぶっ殺すぞ!」
「赤髪……!?」
ラルフさんの大振りの拳が、後ろからスレイバート様に迫る……!
さすがに驚いたのか、振り向いた彼の神秘的な双眸が一気に見開かれた。でも、その攻撃は当たる寸前で躱され――。
「きゃあぁぁっ、なんなんですかあなた! 誰かぁぁっ!」
隣の女性の大きな悲鳴で周りの視線が一斉にラルフさんへと向く。これはまずいと私は夢中で人混みに身体をねじ込み、「すみません、通してください!」と叫びながら、なんとか彼らのもとに辿り着く。