魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「なにもやましいことがねーってのは、この後でたっぷり、その風船みてーに軽い頭でも理解できるほど説明してやろう。だが……」

 たちまち勢いが萎んだラルフさんに向かって、背中に威圧感を漲らせたスレイバート様が放ったのは――

「まずは、死ね」

 なんの慈悲も、猶予もない死刑宣告。
 アメジストの双眼と両手が膨大の魔力の輝きで満ち満ちた後、その場には拳と魔法による制裁の氷嵐が吹き荒れ。

「んっぎゃぁぁぁぁああああああ‼ 助けてくれぇぇぇ、オレはぁ、ただ、シルウィー様がかわいそうだと思っただけなんだぁぁぁぁ!」

 解放的な海辺の街に……周囲から逃げ散る野次馬たちの悲鳴を覆い隠すラルフさんの後悔の絶叫が盛大に木霊したことは、言うまでもない。
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