魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~

9.勘違いの理由 -parent-

 しーんと静まり返った気まずい室内に、時折コトコトと、ティーカップを動かす音が響く。

 もとは教会だったという建物の中に通された私達は、今、礼拝堂の奥にある食堂のテーブル席を勧められ、ゆっくりとくつろがせてもらっている。

「申し訳ありませんでした。買い物を手伝っていただくだけのつもりが、こんなことになるなんて……」
「いえ、こちらこそ……」

 目の前には湯気の立つ温かなお茶とお菓子が用意され、私の対面には顔のあちこちを腫らして、ぐったりとテーブルにうつぶせになったラルフさんが……。

 そしてその隣で、怪我した場所に治療用の軟膏を塗ってあげているのが……先程私に謝罪をくれた、街でスレイバート様と一緒に歩いていた女性。その名を、フィリア・エルプセンさんという……。
 ――そう、メレーナさんではなく。

 彼女はこの孤児院の出身らしく、小さい頃からメレーナさんに育てられ、今はここで寝泊まりしながら、小さい子たちの世話係として働いているらしい。
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