魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 こちら側の事情もよく知らなかったということで、納得しておこう。スレイバート様もエスコートに他意はなかったらしく、彼曰く「女性を丁重に扱うのは、公爵家男子として当然のマナーだろ」とのこと。
 となると結局、完全に私の空回りで周囲に多大なるご迷惑をかけてしまったことになる。

「本当に……皆さん、申し訳ありませんでした!」

 私は姿勢を正すと、彼らに大きく謝罪した。
 ラルフさんまで巻き込んで、自分勝手な妄想で暴走してしまうなんて。どこかでシーツをひっ被って蹲っていたい気分。呆れた様子でスレイバート様が口火を切った。

「はぁ……ったく、だから城で大人しく待ってろって言ったろ? つーかなんだって、そんな思い込みをすることになったんだ?」
「それは…………」

 詳細を説明しようとして、私の口が止まった。よもや――あなたのことが気になりすぎて、いてもたっても居られずに、執務室のゴミ箱を漁っちゃいました――なんて素直に告白できるわけもなく……。

「――ごめんなさい、ごめんなさい!」
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