魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 自身も悪徳孤児院の被害に遭い、そのことを誰より理解しているラルフさんが両腕を組んでうんうんと頷くと、スレイバート様は話を続けた。

「んで……もし不都合な内容があったなら、誰にも伝えずに俺の胸の中に収めておくつもりだった。メレーナにも、誰にも極力それを明かさないように働きかけた上でな。でも……」

 スレイバート様は視線をしっかりこちらと合わせると、私に選択を委ねた。

「ここまで来ちまったなら仕方ねえ。シルウィー、お前はどうしたい? 聞きたくねー話もあるかもしれねえし、このままさっさと城に帰っちまうってのもありだろう。だがもし……お前がどうしても、母親のことについて知りたいってんなら……。お前が今、自分で決めろ。俺に託すのか……それとも直接訊くか」
「……私、は」

 もう答えは決まっていた。私はずっと……ボースウィン領の各地で母の噂を聞くたびに、こう思ってきたのだ。会いたい……会って話ができたら、って。だから……。

 ――バタバタバタ……バタンッ!
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