魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 油断を戒めつつ、一歩一歩慎重に歩を進め、そちら側に辿り着いたメレーナさんが見たのは……。

『――――――っ!』

 中型の魔物――竜肌虎(スケイルティガー)

 体表面が毛皮の代わりに爬虫類じみた堅牢な鱗で覆われている――そんな厄介な魔物が……どうしたのか、地面に倒れ伏している姿だった。

(ど、どうなってんだい……)

 そして、その側には……。

『あぅ――――』

 ボサボサの黒い毛むくじゃらの物体が佇んでいる……?

 と、思えばそれはくるりとこちらを向き、メレーナさんは驚愕した。
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