魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
『こ、子ども……?』
ボロ布と長くパサついた黒髪で全身を覆った、まだ年端もいかない幼女。
彼女は、その黒い眼でこちらをしげしげと見つめているだけで、なんの危険も感じられない。
けれど、状況からすれば、彼女がこの竜肌虎を自力で倒したようにしか思えない。信じがたいことだが、そう考えると警戒を解くのは危険。メレーナさんはいつでも防御魔法を発動できるよう身構えて、ごくりと固唾を呑む。そして、小声で鋭く呼びかけた。
『……あんた。こんなところでなにしてる? 親は?』
『う?』
しかし、そんな質問にも少女は首を傾げただけ。メレーナさんは渋面になり、両手を広げて相手を警戒させないようにしながら、にじりよるように彼女へと近づいていく。そして、間近で少女を観察した。
年は、四、五歳といったところか。通常であれば、もうある程度の言葉を話していてもおかしくはない年齢だが、彼女は今まで不明瞭なうめき声しか発していない。大体、育てている人間が近くにいるなら、こんな森の奥にひとりで放置するようなことはしないだろう。
ボロ布と長くパサついた黒髪で全身を覆った、まだ年端もいかない幼女。
彼女は、その黒い眼でこちらをしげしげと見つめているだけで、なんの危険も感じられない。
けれど、状況からすれば、彼女がこの竜肌虎を自力で倒したようにしか思えない。信じがたいことだが、そう考えると警戒を解くのは危険。メレーナさんはいつでも防御魔法を発動できるよう身構えて、ごくりと固唾を呑む。そして、小声で鋭く呼びかけた。
『……あんた。こんなところでなにしてる? 親は?』
『う?』
しかし、そんな質問にも少女は首を傾げただけ。メレーナさんは渋面になり、両手を広げて相手を警戒させないようにしながら、にじりよるように彼女へと近づいていく。そして、間近で少女を観察した。
年は、四、五歳といったところか。通常であれば、もうある程度の言葉を話していてもおかしくはない年齢だが、彼女は今まで不明瞭なうめき声しか発していない。大体、育てている人間が近くにいるなら、こんな森の奥にひとりで放置するようなことはしないだろう。