魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
『あうぅ! でぁ!』
『な、なんだっていうんだい? もしかして……ついて来いっての?』
『うぁう!』

 ぐい、ぐい、と飽きもせず彼女を引っ張る少女に、メレーナさんは額を抑えて悩んだ。こんな得体の知れない少女に付いていけば、どんな危険な目に遭うか。

 だが……同時にこんな年端もいかない子がひとりぼっちでこの森で生きているのかと思うと、やはり心配ではあった。ここで拘束しようにも、手荒な真似をしようとすれば、多分魔法で撃退されてしまうに違いない。ならばここは、とりあえず少女の案内に従ってみようと決めたメレーナさんは、機嫌良さそうにぺたぺたと裸足で土の上を歩いていく少女に引っ張られて、森深き奥地へと向かったのだが……。

 ――して、しばらく歩いたのち辿り着いたそこに広がっていたのは、まるで楽園のような空間だった。

『はは……なんだこりゃ』

 木々の隙間から射した温かい日差しが、穏やかにその区域を育んでいる。
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