魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
『うあ? ぁうあ、だう……お? わうわう、ふわわ……』

 そして少女はというとその光に目を向け、うわごとのように何かをひたすら呟いている。
 時折自分を指差してくるその姿に、なにか非常に嫌な予感を感じたメレーナさんは、直ちに立ち上がった。

『ごちそうさん。それじゃあたしはそろそろ帰らないと……!』

 下に敷いていた藁のクッションに手をついて勢いよく立ち上がり、洞の入り口を潜ろうとしたメレーナさんのお尻に――どんと少女がぶつかるようにして抱きついてくる。

『うあ!』
『な、なにすんだい! あたしはこれから自分の家に帰らないといけないんだ! あんたのことなんか構ってる暇はないんだよ!』

 もし、安全地帯もなくひもじい毎日を過ごしているのであればと思ったが、少女はここに暮らしている分には少なくとも命の危険は無さそうだ。
 そうなれば、自分が心配してやる必要もない。見て見ぬ振りをするのが最善だと考えたメレーナさんは、少女を振り解こうと、両手を後ろに回したのだが……。
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