魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
ある日――。
定期的に訪れていた燿魔花の生息地への帰り道。花畑に立ち尽くし、森の奥を見つめたまま動かなくなった母が突然言い出したのだという。『メレーナさん、私行かなきゃ。呼ばれてるから――』と。
「冗談だろって笑うことすらできなかった。あたしはそれを見送ることしかできなくて、しばらくその場所にぼーっと突っ立ったまま待ち続けたんだ。すると、小一時間くらい経った頃に、あの子がひょっこりと戻ってきてさ……」
メレーナさんも、あの聖域のことが気になっていなかったわけではなく、この森に来るたびに何度も所在を確かめようとしていたようだ。でも、一度たりとも辿り着けず、諦めていた頃にまたこんなことが起きた。
胸がそわそわとするのを抑え切れずに、メレーナさんは帰り際、あの場所に行ってきたのかを訊ねてみた。すると母は軽く頷いた後、静かに「お家に帰ろ」と言っただけで、そこでなにが起きたのかは教えてくれなかったという。
そしてそれから一週間……。
母は何も言わず、メレーナさんのもとから姿を消してしまったのだとか。
定期的に訪れていた燿魔花の生息地への帰り道。花畑に立ち尽くし、森の奥を見つめたまま動かなくなった母が突然言い出したのだという。『メレーナさん、私行かなきゃ。呼ばれてるから――』と。
「冗談だろって笑うことすらできなかった。あたしはそれを見送ることしかできなくて、しばらくその場所にぼーっと突っ立ったまま待ち続けたんだ。すると、小一時間くらい経った頃に、あの子がひょっこりと戻ってきてさ……」
メレーナさんも、あの聖域のことが気になっていなかったわけではなく、この森に来るたびに何度も所在を確かめようとしていたようだ。でも、一度たりとも辿り着けず、諦めていた頃にまたこんなことが起きた。
胸がそわそわとするのを抑え切れずに、メレーナさんは帰り際、あの場所に行ってきたのかを訊ねてみた。すると母は軽く頷いた後、静かに「お家に帰ろ」と言っただけで、そこでなにが起きたのかは教えてくれなかったという。
そしてそれから一週間……。
母は何も言わず、メレーナさんのもとから姿を消してしまったのだとか。