魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「手紙が置かれててね。『これまで、本当のお母さんみたいに育ててくれてありがとう。またいつか――』って。やってた小遣いでも貯めて買ったのか、綺麗な指輪と一緒にさ。バカな子だよ、旅の路銀も足りなくて苦労しただろうに……。ハハ、それがこれだ。男避けにずいぶん役に立ってくれたよ」
そういうメレーナさんの左手の薬指には、シンプルな銀製の指輪が嵌まっている。そこまで高価なものではないのだろうが、よく手入れされてしっかり輝きを保っているそれが、お母さんからの贈り物であることは明白で――。
「しっかしあの子も薄情なもんで、待てど暮らせど便りのひとつも寄こしゃしない。おかげでなんだか寂しくなっちまってね……。金なんていくら溜め込んだって別に使いどころがあるわけでもなし、気付いたらあの廃教会を買い取って、孤児院なんか始めちまったってわけだ。ったく、全部あんたの母親のせいじゃないさ……まったくもう」
あっけらかんと笑ったメレーナさんだが、その横顔からは、お母さんへの深い愛情が窺い知れた。彼女は多分ここでずっと待っていたのだ。いつか、母がこの場所に帰ってくる日を……。
「メレーナさん、ごめんなさい……!」
この人に謝らないといけないと――気が付けば、頭を下げていた。
だって……母が命を落とした原因は、この私なのだ。
そういうメレーナさんの左手の薬指には、シンプルな銀製の指輪が嵌まっている。そこまで高価なものではないのだろうが、よく手入れされてしっかり輝きを保っているそれが、お母さんからの贈り物であることは明白で――。
「しっかしあの子も薄情なもんで、待てど暮らせど便りのひとつも寄こしゃしない。おかげでなんだか寂しくなっちまってね……。金なんていくら溜め込んだって別に使いどころがあるわけでもなし、気付いたらあの廃教会を買い取って、孤児院なんか始めちまったってわけだ。ったく、全部あんたの母親のせいじゃないさ……まったくもう」
あっけらかんと笑ったメレーナさんだが、その横顔からは、お母さんへの深い愛情が窺い知れた。彼女は多分ここでずっと待っていたのだ。いつか、母がこの場所に帰ってくる日を……。
「メレーナさん、ごめんなさい……!」
この人に謝らないといけないと――気が付けば、頭を下げていた。
だって……母が命を落とした原因は、この私なのだ。