魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 どうしてそんなことができるのか……私を通して感じられる、メレーナさんからの母への愛情を前にして、少しだけそれが理解できたような気がする。

 ――そうしないではいられないくらい、大切な存在だから。
 ――愛したくて堪らなくなるくらい、幾百、幾千もの想いが、ふたりの間には紡がれているから。

 そうして、最後の日にメレーナさんが私を見てこう言った。

「どうだったかな。あんたに、なにか伝わるものがあったらよかったんだけど……」

 もちろん、私はそれに十分だと答える。
 だって……その時の顔は、私がたったひとつ知る母の絵姿のものとそっくりな、羨ましくなるほど素敵な笑顔だったんだから――。
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