魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~

13.送別の宴と塩 -malice-

 ボースウィン領へ帰ろうという日の前日。孤児院では私たちの送別お食事会を開いてくれることになった。

 たった三日程度ここに滞在しただけの私からしたら申し訳ないのだが、それでもその心遣いは嬉しい。メレーナさんやフィリアさんともずいぶん打ち解けたし、スレイバート様やラルフさんも院の子ども達にずいぶん懐かれていて大人気だ。勉強を教えたり、得意の魔法を披露してあげたりして、メレーナさんにこき使われながらも時には楽しそうに過ごしている姿が見られた。

 でも、楽しい時間ほど過ぎるのはいつもあっという間で……最終日の今、私たちはお食事会で出す料理の準備に追われている。

「ラルフ坊やはとっととあっちに皿を運んできな! スレイバートは、まあ、子供たちの面倒でも見といとくれ」
「なんで俺だけガキ扱いなんだよっ! んで、どうしてスレイバートだけ楽させてんだよ!」
「そりゃあっちは金払いのいい支援者(パトロン)だもんねぇ。あんたもうちの院に寄付でもしてくれるなら考えてやってもいいけど?」
「ぐっ……」

 ラルフさんは、今リュドベルク領は財政が厳しいんだよ……とぼそぼそ愚痴を吐きながら大人しく十枚重ねの取り皿を両手に運んで行く。

 そんな公爵家のお坊ちゃんを簡単にやり込めてしまったメレーナさんの口のうまさに舌を巻きつつ、私は紙袋の中にあった食材を、テーブルの上に並べていく。子どもとはいえ、十人以上いるとなると、食材の仕分けだけでもバカにならない。
< 830 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop