魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が？ ～傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた～

　これらは、男性陣が先ほど外の市場で買い求めてきてくれたものだ。ふたり一緒に出掛けてよくよく喧嘩にならなかったものだと思うが、そこでも各々の性格をすでに把握しているメレーナさんが回る店を分担させ、勝負という形にさせてさっさとこなさせたらしい。

　さすが商売人というか、多くの子どもの面倒を見ているからというのか、こういった見事な人あしらいのやり方を見る度に私は憧れてしまう。人間を育てていくにはきっと優しさだけでは足りないのだと、人生の教科書を開くような思いを抱く。

「シルウィーさん、手伝いますよ。今日使いそうにないものは、奥の戸棚に仕舞っていきますね」
「ありがとうございます！」

　そこへエプロンの紐を結びながら、フィリアさんが駆けつけてくれた。彼女は手際よく必要のない食糧を集めると、地下にあるという保管場所にせっせと運んで行ってくれる。同い年だというけれど、その背中は私より断然頼もしい。

「ふふっ、メレーナさんが腕を振るってくれるなんて久しぶり。とっても料理上手だけど、いつもは私に遠慮して、全部任せてくれるから……」

　フィリアさんは、こちらもやる気満々で厨房に入って行ったメレーナさんを見送ると、嬉しそうに呟く。やがてだいたい、本日の食材が出そろい下ごしらえに移ろうとしたところで、不思議そうに彼女は尋ねた。