魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「……シルウィー様は、私たちを見下さないんですね」
「えっ……」
急にそんなことを言われ、ようやく上手に剥けるようになって長く繋がった芋の皮が途中でぷつりと切れ、床に落ちた。
「見下すなんてそんな……どうしてですか?」
「親がいない私たちは、どんな血筋から生まれて来たかすら定かではないから……」
フィリアさんはそれをさっと拾ってごみ箱に捨ててくれた後、手慣れた様子でサクサクと野菜をカットする作業を進めながら言った。
別に恨みがましく睨みつけられているわけでもなく、フィリアさんは普通に微笑み淡々と話しているだけだ。しかしその表情はわずかに強張っていて、私たちでは推し量れない感情が胸の奥に潜んでいるのが窺い知れた。
「今の暮らしを嘆いているわけじゃないんです。ただ……私達は貴族の方々に、恐れと妬みを同時に抱えていて……あなたたちを見ていて、割り切れない気持ちがずっとありました」
フィリアさんは、実は私がラルフさんと一緒にクラメーアの街に辿り着いた時、途中で尾けられていたことに気付いていたらしい。そして羨ましく思ったのだという……お金も権力も、美しさも強さも全て持ち合わせたスレイバート様と結ばれる私のことを。
「えっ……」
急にそんなことを言われ、ようやく上手に剥けるようになって長く繋がった芋の皮が途中でぷつりと切れ、床に落ちた。
「見下すなんてそんな……どうしてですか?」
「親がいない私たちは、どんな血筋から生まれて来たかすら定かではないから……」
フィリアさんはそれをさっと拾ってごみ箱に捨ててくれた後、手慣れた様子でサクサクと野菜をカットする作業を進めながら言った。
別に恨みがましく睨みつけられているわけでもなく、フィリアさんは普通に微笑み淡々と話しているだけだ。しかしその表情はわずかに強張っていて、私たちでは推し量れない感情が胸の奥に潜んでいるのが窺い知れた。
「今の暮らしを嘆いているわけじゃないんです。ただ……私達は貴族の方々に、恐れと妬みを同時に抱えていて……あなたたちを見ていて、割り切れない気持ちがずっとありました」
フィリアさんは、実は私がラルフさんと一緒にクラメーアの街に辿り着いた時、途中で尾けられていたことに気付いていたらしい。そして羨ましく思ったのだという……お金も権力も、美しさも強さも全て持ち合わせたスレイバート様と結ばれる私のことを。