魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「えっでも……どうして私がスレイバート様の婚約者だって」
「見ればわかりますよ、そのくらい。やっぱり、私たちとは立ち姿や顔立ち、所作などからしてまるで違いますし。それに……あんなに一生懸命な表情で見つめていたら」

 フィリアさんはその時を思い出したのかくすっと笑う。そして、だからわざと必要以上にスレイバート様に近づいているように見せかけてからかおうとしたのだと、打ち明けてくれた。

「あの時はなんだか……ただ親がいないだけでどうしてこんなにも、違う境遇で過ごさなければならないんだろうって悔しさが溢れてしまって。でも……一緒に過ごしていると皆さん、私たちに普通に接してくれて、子どもたちにも優しくて……。だから私、心の狭い自分が恥ずかしくなって。本当に、ごめんなさい……!」
「い、いえ……」

 深く謝罪され、私はしどろもどろになって立ち尽くした。

 なにを言おうと、他から見て貴族が恵まれた身分だというのは変わりない。衣食住も将来も保証され、結婚相手まで用意されているのだ。そこに個人個人の事情を持ち出したところで、納得してもらうことは難しい。
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