魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 でもこうして彼女は自分から、私たちのことを理解しようと踏み出してくれた。ならば、私だって、彼女たちと仲良くするためにさらけ出すべき想いがあるはず。

「怒らないで聞いて欲しいです。実は……私、貴族じゃない人たちのことをずっと羨ましく思っていました」
「えっ……?」

 フィリアさんが目を見開き、私は私の今までの生活を少しだけ明らかにして見せた。

「私の生活には、自由がなかった。朝から晩まで、家の者の監視下に置かれて、決められた予定をこなし続けるだけ。まるで、誰かの……家とか国とかそういう大きなものに操られる人形みたいな気分で、毎日を過ごしていました。だから……私も、自由に見える街の人たちに対して、ずっと嫉妬を抱えていたんです」
「…………」

 彼女の暮らしには、お金や物、自らを表す立場がなく……私の暮らしには自由と愛情がなかった。どれが大事なのかは、人によってきっと違うのだろう。でも、私たちはお互いに欠けているものを求めようとしていたんだと、なんとなく分かった。

「フィリアさん……きっと誰もがすべてを手に入れるなんてこと、できないんじゃないでしょうか。私はメレーナさんのような親や、例え血が繋がっていなくとも、周りに助け合える兄弟がいることが……自らの進む道を自分の手で広げていける自由が、とても羨ましかった」
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