魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「手を止めさせてごめんなさい。玉ねぎを切る時だけは泣いてもいいって教わったので、ついこんな話をしてしまいました。さあ、続きをしましょう。メレーナさん、怒ると怖いから」
見ていたようなタイミングで『まだかい遅いよ!』と、キッチンの奥から声が飛んでくるのを聞いて、私たちはくすりと笑い合う。
貴族と平民の間に開いた溝は深い――けれど、それでも私たちはひとりひとり違う人間だから。心の底から分かり合えることもきっとあると信じていきたい。
そこからは急ピッチで作業は進められ、私は簡単な雑用をしながら手際よいフィリアさんと、メレーナさんのコンビネーションを見守っていた。
だが、そこで妙な出来事が、私たちの前で起こる。
「あら……メレーナさん。これって【精霊の祈り塩】!? こんな高いものどうして……」
「ん? ああ、どうせスレイバートが買って来たやつだろう? やっぱり公爵様ともなると金銭感覚がぶっとんじまってるねえ、これひとつであたしらが何日食って行けるか。だけどまあ、いい機会だ、たまには景気よくぱーっと使っちまおうかね」
キッチンテーブルの隅に隠れていた白い袋を、肉に下味を付けようとしていたメレーナさんが掴み上げようとした時……。
見ていたようなタイミングで『まだかい遅いよ!』と、キッチンの奥から声が飛んでくるのを聞いて、私たちはくすりと笑い合う。
貴族と平民の間に開いた溝は深い――けれど、それでも私たちはひとりひとり違う人間だから。心の底から分かり合えることもきっとあると信じていきたい。
そこからは急ピッチで作業は進められ、私は簡単な雑用をしながら手際よいフィリアさんと、メレーナさんのコンビネーションを見守っていた。
だが、そこで妙な出来事が、私たちの前で起こる。
「あら……メレーナさん。これって【精霊の祈り塩】!? こんな高いものどうして……」
「ん? ああ、どうせスレイバートが買って来たやつだろう? やっぱり公爵様ともなると金銭感覚がぶっとんじまってるねえ、これひとつであたしらが何日食って行けるか。だけどまあ、いい機会だ、たまには景気よくぱーっと使っちまおうかね」
キッチンテーブルの隅に隠れていた白い袋を、肉に下味を付けようとしていたメレーナさんが掴み上げようとした時……。