魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 正視し難い(まばゆ)さに目を細めつつも、私は疑問をそのまま口に出した。

「お邪魔ではなかったですか? 何か、考え事をしていたようなので……」
「……別に大したことじゃねー。再認識してただけだよ。この国にゃ、まだまだうまくいってねー部分もたくさんあるんだなってことを……」
「そうですね……」

 それに関しては、短い間ながらこの孤児院に預けられている子どもたちと接した私も感じていた。いや、ここの子たちは、フィリアさんやメレーナさんの助けがあるだけまだマシなのかもしれない。世の中には、誰の助けも受けられない人や、ラルフさんの幼少期のように悪い人間の食い物にされてしまう人だっている。

 スレイバート様は琥珀色のお酒を傾けて呷りながら、不満そうに眉を寄せる。

「親や金、自由、他にもいろんなものを生まれながらに失ってるやつらからしたら、どうしたって俺たちはいい生まれで恵まれた、上から目線の嫌なやつでしかねえよな。そんなやつが手を差し伸べたって、すんなり受け入れられないやつだっているだろう……。でも、俺はだからってそういうやつらから距離を置こうとは考えたくねえんだ」
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