魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 どうにか少しでもそういう人たちの力になりたい。だが、あらかじめ不信感を持っている人から、信頼してもらうのはとても難しい。だからメレーナさんみたいに爵位や出自などにこだわらず、自分が見て感じたままを受け入れてくれる人物がいることはとてもありがたいことなのだと、スレイバート様は語った。確かに、そういう人物は貴重だ。ひとりいるだけで、周りの人の不安をとても軽くしてくれる。

「私も、今日フィリアさんと話していて思いました。身分という枠組みが、必要以上に私たちの間に溝を生み出しているんだって。でも、それは必ずしも埋まらないものじゃなくて……ちゃんと話してみたことで、彼女にも分かってもらえたと思います。必ずしも、私たちばかりが理想的な生活を送れてるわけでもないんだって……」

 本当は、皆分かっているはずだ。完璧な生き方なんて存在せず、誰もが自分なりの苦しみを抱えているのだと。でも……私たちは時としてそれを自分の心では受け止め切れず、次第に誰かへの恨みや憎しみにすり替えてゆく。そうした気持ちはいずれ、近くにいる人達に降りかかり、掴んでいた幸せまでも壊してしまう。

 だからこそ……悔しさや嫉妬をすべて心の中から失くすことはできないまでも、必要になるのだ。そうした苦しみから心を、守り支えてくれるもの……夢や希望だったり、自分を認めてくれる居場所が。

「なるべくたくさんの人に、光が当たるような国になってほしいですね」
< 842 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop