魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 まずはこの数日の間メレーナさんと過ごし、お母さんの面影をそこに見たこと。
 あのお店にはたくさんのメレーナさんと母の思い出が詰まっていて、どこか今では、しばらく一緒に暮らしていたような気さえしている。
 そのことを伝えると、スレイバート様はどこか遠い目をしていた。彼自身も、母に憧れを抱いていたから、ここでメレーナさんと話して、なにか感じることがあったのかもしれない。

 それから……料理の手伝いをしていた時に、呪いのかかった塩を見つけたことも。

 【精霊の祈り塩】――スレイバート様が食事会のために用意した食材の中にそれが混じっていたことについて、彼は驚きつつも食料品店の店主の勧めるままに購入したものだと教えてくれた。

 スレイバート様が店主から受けた説明によると、それは現在、領地の貴族の間でものすごい評判になっているものらしい。有名なゲルシュトナー産の塩の中でも特に手間暇かけてつくられたものを、さらに精霊教会の巫女様が直々に祝福の祈りを捧げて世に送り出した数量限定の至高の一品。
 噂によれば、まさに天上の美味を口にしたようなまろやかな辛みとコクがくせになるお味で、一度使い始めると手放せなくなるほどなのだとか。

「えっ、巫女様って……まさかヴェロニカが……?」
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