魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
(会って、話をしないと……)

 話し合いができる段階は、もうとっくに過ぎているのかもしれない。それでも……先程もスレイバート様と話したばかりだ。どんな人にも、その人なりの苦しみが存在する――そのことを思うのならば、彼女がなぜ帝国に牙を剥くようなことをするのか……それとなぜ、私を殺そうとしているのか、理由を聞き出さなければならない。彼女の口から直接、どうしても。

 そんな覚悟を固め、膝の上でぐっと拳を握りしめていると、私の左手にそっと彼のものが重なった。

「んな似合わねえ顔すんな……もうすぐ準備は整うんだ。だから、呪いのことをこっちの領主に警告したら、すぐに一緒に王都に向かって、これまでの片を付けようぜ」
「ええ……」

 頼もしい笑顔に見下ろされ、私は重ねられた彼の手を両手で挟むと頷いた。この人が側にいてくれるなら、なにも恐れることなんてない。すべての出来事を片付けて……絶対にスレイバート様と一緒に幸せを掴もう。

 まるで恋人同士の彫像がごとく、時が止まったように見つめ合う私たち。

 そこで先にふっと視線を切ったのはスレイバート様の方だった。
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