魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「そういえばお前からちゃんと好きだって言われたこと、なかったっけな」
「はい……だからちゃんと、伝えておきたくて」

 この二文字を、誤魔化さずに伝えることが、どれだけ難しかったか……。

 リュドベルク領で初めて彼が真正面からちゃんと想いを伝えてくれた時、私は嬉しい反面どうしていいか分からなかった。
 親からの愛情を受けた記憶がほとんど残っていない私にとっては、人を愛するということが自体が未知のもので。ボースウィン領に来てからも、優しくされ好意を感じることは多かったにしろ、でもそれが恋愛という感情にどう発展していくのかまったく不明だったし……。

 流されるまま彼の婚約者という立場になっていって、私はどこかでずっと引け目を感じていたのだと思う。たったひとりの家族にも疎まれ、捨てられた私なんかが……人との繋がり方もろくに知らないままこの人を幸せにしていけるのか、やっぱり自分に自信がなかったのだ。

 きっと……ひとつ道が違っていたら、今、私はこうしてここに彼と一緒にいない。

 ――ルシドやテレサが、離れ離れになろうとするスレイバート様と私を結び付けてくれた。
 ――クラウスさんをはじめとしたボースウィン領の人々が、余所者の私を温かく受け入れた。
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