魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 ――他にも、たくさんの人たちが私に絆というものの持つ大きな力を教えてくれなければ……今私はこうしてメレーナさんと出会い、母のことを知ることもなかった。どころか、どこかで一人ぼっちのまま寂しく生きて、死んでいくだけだったかもしれない。

 でも……あの場所で関わることのできたたくさんの人たちが、私に生きる意味を与えてくれた。笑顔を向けて、元気をくれた。私のことを認めてくれて、少しずつやれることが増えてゆき、自信も付いた。

 いつでもすぐに顔が思い浮かぶ、私の大好きな人たち。

 中でも、とりわけ特別な目の前にいる彼。綺麗で、格好良くて、意地悪で強引なところもがあっても肝心なところは優しくて。陰では努力家で、いつも私や周りの人を守ろうとしてくれて……。

 けれどそれすら、きっと理由の一部でしかなく。

 ふとした瞬間に見せる表情や仕草、声色、触れてくれた時の温もり。顔に似合わず怒りっぽかったり、意外と繊細だったりという、よくないところもひっくるめて、すべてが特別で愛したくなる。

 だから、こんなにも離れがたく……一緒に居ると、胸の鼓動が弾むのだ。まるで、宝物を見つけた子供みたいに、はしゃいで、スキップする――。
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