魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 一方で、彼の方は楽し気にぺろりと薄い唇を舐め、余裕の表情だ。

「……ま、今日のところはこれで満足しといてやるよ。続きは、もっとちゃんとしたところでな……」
「そそ、そう、ですね……」

 いきなりのこととはいえ、なんの躊躇いもなく抵抗もせずに受け入れた自分が怖くなり、指先を突き合わせたまま硬直していると、急にふわりと腰から下が掬われた。

「きゃっ! な、なにを?」
「このまま部屋まで送る。疲れてんだろうし、それくらいはしてもいいだろ」
「え、ええと……じゃあ、お願いします」

 はたしてそこまで甘えていいものか分からないけど、私はそのまま彼に身体を委ねて横抱きにされ、大人しく運ばれていく。

 毎度毎度、人の身体ってそれなりに重いのに、男の人ってすごいなぁと感心していると、
 確かに慣れない生活のでの疲れあったか、次第に心地のいい眠気が襲ってきて……。

「おい、着いたぞ」
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