魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「きゃあ、素敵! その時はシルウィーさん、私にもウエディングドレスを触らせてくださいね! やっぱり、憧れですもの!」
「ええ、いくらでも!」

 はしゃいだ様子のフィリアさんが私の両手を取ると軽く飛び跳ね、女友達の輪が増えた私も一緒になって喜び合う。その時は、たくさんボースウィン領のいいところを知ってもらって、北国の旅行を楽しんでもらえたらいいなと思う。

 そんなことを私たちがしている後ろで、四つん這いになっていたラルフさんが大きく声を張り上げた。

「だああっ! おめえらっ、そろそろ離れろっつの。オレもこいつらと一緒に帰んなきゃなんねーんだよ。また今度、妹と一緒に土産持って来てやるからさぁ~」
「やだー、ラルフにいちゃん。ずっといてよぉー」
「あたちのだんなさまになってくれるっていったじゃない~」

 大人気のラルフさんは、千切っても投げても身体中によじ登ってくる子どもたちを引き剥がすので苦労している。そんな姿を微笑ましく見つめた後、メレーナさんは私の手を取り、なにかを掌の内に握らせた。

「これは……?」
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