魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 それはいつもなら最奥へと辿り着けず、怯えに足を止め、座り込んでしまうけれど。でもこの時の私は、そこへ行けばなにかが起こる気がしていた。意識のさらに深く、深くへと手を伸ばすように、ひたすら自らを奮い立たせ、前に進む。

 やがて、暗闇の中に妙な光が灯り、私は近づいていった。

(これが……私の中心にあるイメージ? なぜ、こんなものが……)

 私の一番奥にあったもの。それは、触れられるほどに近づいたはずなのに、どうにもはっきりしない。光で編まれた揺り籠? ……のような形をしたそれは、ぼやけるように明滅しており、中に、なにかが見える……。

(…………赤ちゃん?)

 一抱えに収まりそうな輪郭だけの存在を、私はなぜだかそうだと思った。手足をぎゅっと縮め、緩やかにお腹の部分が上下しているその様子は、まるで安心して眠っているかのようで……。

(……あ)

 ガラス窓の外側から覗き込むような感じで、金色の籠に指を伸ばそうとした瞬間。それは緩やかに回転を始めた。同時に私の身体の外から、どっとなにかが流れ込んでくる――!
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