魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
お母さん、きっとここで暮らしていたんだ……。
私は、胸にじんわりと湧き上がる、感慨のようなものを抱きながら、そっと指で床面をなぞる。柔らかい土の温もりが、手のひらを歓迎するように受け止めてくれる。
「……ほら、ここ見てみろよ。誰かの足跡みたいなのがある」
隅っこのほうだったから消えずに残っていたのか、その小さな足形を、私たちはしゃがんで覗き込み、ふっと笑う。とても小さくて、私の手のひらくらいしかない。
私は、少しでもその時の母の気持ちを知りたくなって、ドレスの汚れも気にせずぺたんと床に座り込んだ。洞の外を眺めると、丸い窓のような出入り口からは、まるでおとぎ話の世界に迷い込んだみたいな、穏やかで美しい光景が広がっていて。
(妖精になったみたい……)
別世界に迷い込んだような気分で、私はしばらくその光景を楽しんでいた。
すると――……。
リ、リ、リリ……。
私は、胸にじんわりと湧き上がる、感慨のようなものを抱きながら、そっと指で床面をなぞる。柔らかい土の温もりが、手のひらを歓迎するように受け止めてくれる。
「……ほら、ここ見てみろよ。誰かの足跡みたいなのがある」
隅っこのほうだったから消えずに残っていたのか、その小さな足形を、私たちはしゃがんで覗き込み、ふっと笑う。とても小さくて、私の手のひらくらいしかない。
私は、少しでもその時の母の気持ちを知りたくなって、ドレスの汚れも気にせずぺたんと床に座り込んだ。洞の外を眺めると、丸い窓のような出入り口からは、まるでおとぎ話の世界に迷い込んだみたいな、穏やかで美しい光景が広がっていて。
(妖精になったみたい……)
別世界に迷い込んだような気分で、私はしばらくその光景を楽しんでいた。
すると――……。
リ、リ、リリ……。