魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
(いますよ、その男は今もあなたの隣に。ただ、現在私たちが、別の領域に移動してしまったため、姿は見えませんが)
「領域……?」

 聞き慣れない言葉に対し、光による追加の説明が行われた。

 それによると、彼女らが存在する世界は私たちの世界は似て非なる、いわば水面に映る虚像のようなものであるらしい。そして現在ここにいる私は、そっくりそのまま魂だけが抜き出されたような状態なのだと、彼女は教えてくれた。

「そういえば、なんだか身体の感覚がひどくぼやけているような……」

(無理やりこちらに呼び出された弊害なのでしょう。あまり長くはこちら側に留まらない方がよさそうですね。おそらくそれを成さしめたのは、その胸の石に宿る者たち……)

 胸につけた貴聖石のペンダントにあるふたつの模様が、淡く輝いている。ここに宿る何者かが、私を彼女と引き合わせてくれたらしい。

「この中の!? だとするとあなたは……いえ、あなたたちは、もしかして私たちが精霊と呼ぶ、特別な存在なのではありませんか?」
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