魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 かねてより持ち続けていた疑問。帝国に広がる、それぞれの領地を守護していた存在が、もしやこの中に宿り、幾度も私を危険から守護してくれたのでは……?

 そんな質問に、考え込むようにゆるやかに内部をぼやけさせながら、光の声が頭に響く。

(そうですね……その者たちは、確かに私と同種の波長を表している。呼び名はともかく、そういう認識で間違いはないのでしょう)

 肯定するかのように、容れ物であるペンダントもふぉんと瞬き、私は居てもたってもいられず、彼女に尋ねかけた。

「あのっ……どうして母は、ここで暮らすことになったんです!? もしかして、母はあなたがたと同じ存在だったりするんですか?」
(それは半分正しく、また、半分間違っていると言えるでしょうね。あの子は長く我らと関わったことにより、肉体までもがこちら側に移りかけていました)

 言っている意味が量りかね、私が困惑気味に眉を顰めると……光は次に、母がこの場所へ迷い込んできた経緯を教えてくれた。

(……ある日、この地に住む森の獣の一体が、布に包まれた赤子を拾ってきました。その赤子が膨大な魔力を備えていたことも原因ですが、赤子は他にも繋がりとなる因子を備えていた……)
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