魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
どうやら、この聖域に住まう生き物たちは、半分以上がこちら側――仮に精霊界と呼ぼうか――に魂までも染まっていて、普段は外に出て行かないらしい。しかしたまたま、なにかを感じ取ったその獣たちが赤子であった母を見つけ、この場所に引きずり込んだ。
(入ってきた者を拒まない……それもここでの決まりごとのひとつ。なので私はその赤子を受け入れざるを得ず、獣たちに面倒を見させることにしました。比較的同化の浅い獣に乳を与えさせ、温かい毛皮にくるまらせて眠らせ、時には学びや遊びの相手を務めていると……赤子はすくすくと大きくなっていきました)
だが、ひとつばかり問題があったのは、赤子が頻繁に聖域の外に出たがったことだ。この狭い場所では、人たる者の好奇心は抑えきれなかったのだろう。光は何度もその行動を諫め、危険であるとの意志を伝えたが、赤子の行動は収まることはなかった。そして……ついに彼女は、自分の仲間である他の人間と、出会ってしまったのだ。
「それは、メレーナさんのことですよね? ええと、こういう三角の帽子をした、ちょっと鋭い目をした女の人で……」
光は私の説明では把握できなかったか、ふわりと浮かび上がると、こちらの額の中に身体を沈み込ませる。それだけで、メレーナさんの姿が伝わったようだった。
(入ってきた者を拒まない……それもここでの決まりごとのひとつ。なので私はその赤子を受け入れざるを得ず、獣たちに面倒を見させることにしました。比較的同化の浅い獣に乳を与えさせ、温かい毛皮にくるまらせて眠らせ、時には学びや遊びの相手を務めていると……赤子はすくすくと大きくなっていきました)
だが、ひとつばかり問題があったのは、赤子が頻繁に聖域の外に出たがったことだ。この狭い場所では、人たる者の好奇心は抑えきれなかったのだろう。光は何度もその行動を諫め、危険であるとの意志を伝えたが、赤子の行動は収まることはなかった。そして……ついに彼女は、自分の仲間である他の人間と、出会ってしまったのだ。
「それは、メレーナさんのことですよね? ええと、こういう三角の帽子をした、ちょっと鋭い目をした女の人で……」
光は私の説明では把握できなかったか、ふわりと浮かび上がると、こちらの額の中に身体を沈み込ませる。それだけで、メレーナさんの姿が伝わったようだった。