魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が？ ～傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた～

「ええ、この者です。本来は招かれざる客でしたが、ある目的を果たすためには丁度よかった。というのもその頃、看過できぬ事態が、そちらの世界に起こり始めていたから」

　目的……看過できぬ事態。話が飛び、私はしばしぼんやりと呆けた。

　それを見て、こちらの記憶を探ったことで察したのか、光はやや呆れたようにその姿を翳らせる。

「お前にも覚えがあるでしょう。今や、この大地を大きく包み込みつつある、闇の力のことを――」
「えっ―――――まさか」

　呪いと災厄……彼女の言う看過できぬ事態というのがそれを差すと分かった時、私の中で、いくつかの事柄が数珠つなぎになっていく。

　お母さんが精霊の元で過ごしていたこと。
　そして、ある時メレーナさんの元を離れ、世界に飛び出したこと。
　それから、帝国中を回り、多くの人々を助けていったこと。
　そして、あるいは私を生み、亡くなったことまでも――。