魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~

18.シリルとベリカ

「――リル、シリル。また死んだふりごっこしてたの? こんなところで寝ていると、しまいに獣に食べられちゃうわよ」
「……ベリカ? ごめんなさい、ついお日様が心地よくて」

 ひとりのようやくあどけなさが顔から抜けてきたくらいの少女が、真っ白な花畑から身体を起こす。頭を囲う長い黒髪の間から、輝く黒い瞳が見えた。それを起こしたのは、真上から両手を腰に当てて覗き込む、こちらは金の髪と瞳をした少女。ふたりともが、簡素だが美しい、透けるような純白の衣装を身にまとっている。

 彼女たちは色合いと後、ベリカの耳に付けられた大粒の赤石のイヤリング――シリルが誕生日に贈ってくれたものだ――を別にすればまるで生き写しの様にそっくりな、双子であるのだった。

「まったく。遊んでばかりいないでもうちょっとしっかりしてよ。あなたがふらふらしていると、姉である私の方が悪く言われるんだから」
「ごめんね。でも姉って言ったって、ほとんど一緒にお母さんの身体から出て来て――」
「うるさいっ!」

 そんな風にぽかりと聞き分けの無い妹の頭を小突くと、ベリカはその手を引いていく。その行く手には、小さな村の入り口が広がっていた。
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