魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
木槍を肩に担いだ衛兵に軽く挨拶しながら門をくぐると、たくさんの木材や藁で作られた家々が見えて来る。そこでは、忙しなく村人たちがあちらこちらを行き来し、村の中央の広場に何かを運んできていた。
年季の入った部品の一つ一つ――それには、様々な文字や記号が書き連ねてあり、それらがだんだんと組み上がっていくたびに、少しずつ厳かな様相が浮かび上がってくる。
そしてそこに姿を現し始めたのは、大きな舞台だ。正方形の四つ角の隅には篝火を焚くための台が設置され、周囲が夜闇に閉ざされれば、赤々とそれは浮かび上がることだろう。
「今日の選別式、楽しみだね。あんなに大きなお舞台の上で踊ったり、お力をお披露目するんだぁ……」
「なに言ってるの。あんたのことなんて誰も見てやしないわ。精霊の巫女に選ばれるのは、このわ・た・し。そのためにずっと努力してきたんだから」
「……そうだね」
胸を張ってきっぱりと言い切った双子の姉に、シリルはくすりと笑いかける。
本日は、この村で数十年に一度の大きな祭りが行われる。そこで人々は今年の豊穣を祝うとともに、これからもこの平穏を永久に続かせてくれることを、大地を見守ってくれていると謂われる精霊たちに願うのだ。
年季の入った部品の一つ一つ――それには、様々な文字や記号が書き連ねてあり、それらがだんだんと組み上がっていくたびに、少しずつ厳かな様相が浮かび上がってくる。
そしてそこに姿を現し始めたのは、大きな舞台だ。正方形の四つ角の隅には篝火を焚くための台が設置され、周囲が夜闇に閉ざされれば、赤々とそれは浮かび上がることだろう。
「今日の選別式、楽しみだね。あんなに大きなお舞台の上で踊ったり、お力をお披露目するんだぁ……」
「なに言ってるの。あんたのことなんて誰も見てやしないわ。精霊の巫女に選ばれるのは、このわ・た・し。そのためにずっと努力してきたんだから」
「……そうだね」
胸を張ってきっぱりと言い切った双子の姉に、シリルはくすりと笑いかける。
本日は、この村で数十年に一度の大きな祭りが行われる。そこで人々は今年の豊穣を祝うとともに、これからもこの平穏を永久に続かせてくれることを、大地を見守ってくれていると謂われる精霊たちに願うのだ。