魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 その祭りの目玉となるのは……毎年行われるいくつもの祭事で中心的役割を果たす、精霊の巫女の選別式。それは、選ばれた者の命が尽きるまで続き……その権力たるや、時にはこの村を収める村長以上にもなる、重要な役目。

 数年前から急に先代の巫女の容体が悪くなり、いつ精霊の御許に呼ばれるかも分からなくなった。なので祭りの開催を予感したこの村の少女たちは、その後釜目当てに、より美しく、より賢くなるよう日々心身を磨き、その日に備えてきた。

 そして、ついに昨年先代の命が尽き、新しい巫女が選ばれることになった。

 それが今日……村中の少女たちが待ち望んだこの日なのである。だというのに……。

「……そんな忙しい日にあんたったら! あんな不真面目なところが見つかったら、村から追放されても仕方がないわよ!」
「ご、ごめんなさい! でもどうせ、選ばれるのはお姉ちゃんだと私も思うし」

 おべっかではなく、本気でそう思っている目で見つめてくるシリルに、ベリカは満更でもない様子で鼻を鳴らすと、ぐいと妹の頬を引っ張る。

「……ふん。そうなったら、あんたはせいぜい巫女として崇められる私の側で、こき使われるのよ。いいわね」
「ふぁ~い。わたしも、お姉ちゃんが村の皆に尊敬されているところを、早く見てみたいよ」
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