魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「そうよ……すべてを。すべてを滅ぼして……もう奪われないようにしなきゃ。すべてを……」

 そして、うわごとを呟きながら村の外に出て行った。心の奥深くまでが暗く重たいもので満ちゆくのに、解き放たれたような心地よさを感じながら……。



 ――その後しばらくして……ある悲劇を村が襲った。

 力を取り戻した『くに』が再び攻めてきたのだ。しかも、何者かが情報を漏らしたのか、今度は村の弱点となる守りの薄い場所を突くような形で、抵抗もままならない。たちまち村は占拠され、『くに』の支配下に置かれることとなった。

 そして、そのくには村を守っていた巫女の成り手たちに無理強いし、ひとつの組織を作らせた。それは後に『精霊教会』として、くに中に大きな影響力を持つようになってゆく。

 その創設者の名前は秘されているが、金髪金瞳のたいそう美しい女だったらしく、その耳には常に、血のような色をした三角形の宝石が吊るされていたそうだ。そしてその耳飾りは、巫女が代替わりするたびに受け継がれていったと、伝えられている。
< 897 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop