魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~

19.失われた面影 -memories-

「――しっかりしなさい。話はまだ終わりではないのですよ」
「――――っ、すみません」

 長い記憶の閲覧が終了し、急激に意識がこちら側に引き戻されたことでくらくらとしながらも、私はなんとか気絶しないよう踏みとどまった。

 少し深呼吸をして気持ちを落ち着けつつ、目を開く。

「……お、大きな災いがこの地に広がりつつあるという話でしたよね? で、でも……それが、お母さんのことと、どういう関係があるんでしょう?」

 まだ完全に与えられた記憶を消化しきれない私を、光が導く。

「察しが悪いというには、少し酷なのかも知れませんが……。ベリカという少女が、シリルを気絶させた後に聞いた声、それが精霊の一種であったというのは分かりますね?」
「は、はぁ……すべてを滅ぼせとか呼びかけた存在のことですよね。だったら、精霊も私達人間と同じように、悪い人とよい人がいる、ということなのでしょうか」
「それは少し大雑把な解釈です。ベリカに憑りついた者は他とは違い、人間の強い負の思念から生まれた特殊な例。ゆえに、通常ではそちら側に干渉したがらない私たちと違って……お前たちの世界の破壊を望みだした」
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