魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 いろんな場所で、母はたくさんの人たちとの繋がりを紡いで、それを守ろうと必死に戦っていた。なのに、その命を私が断ち切り、二度と誰とも関われない場所に……死へ、追いやってしまった。

 今や謝ることも、償うこともできない。どうしたらいいか分からず、両手で顔を覆うばかりの私の耳を、光の静かな優しい言葉が打つ。

「あの子は、きっとお前の存在を祝福していたはずです」
「えっ?」
「お前の身体には、幾重にも連なる、強い守護の魔法がかけられている。まるで、何者かから娘のことを守ろうとするかのように……。お前が身体の内に、膨大なる呪いを閉じ込められていられるのも、そのせいでしょう」

 ささやかな光を何度もぱっぱっと点けたり消したり。その姿はまるで励ましてくれているみたいだ。

「おそらく、生まれるまでの長い時間を掛けて、自らの命を織り込むようにしてかけたもの。世にも美しき、たったひとりの大切な存在に向けた、無二の魔法……このようなもの、特別な想いがなければ、生み出せようはずがありません」

 それを聞いて、私はあるイメージを思い出した。心の奥底にあった金色の揺り籠。幼い私を守るように闇を遠ざけてくれていた、優しい光。
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