魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「――あの子は、お前のことを誰よりも愛したかったのでしょう」

 ――――――言葉がでてこない。

 母は、私を呪ったり疎んじたりもせず……出会いを待ち望んでくれていた。

 温かいものが胸から押し寄せる。とめどなく、とめどなく……目蓋から雫となって溢れてゆく。

 ――寂しい、寂しい、会いたい、会いたい……。

 そんな想いだけがぐるぐると胸の中を駆け巡り、私は狂おしく母の姿を求める。

「う……ううっ…………、なんで――」

 ほんの少しだけでもいいから、お母さんと一緒に居たかった。ちゃんとその腕で抱きしめていてもらいたかった。そうしたら、きっと――。

「おかあ……さん……っ」
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