魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~

20.ゲルシュトナー城へ -wealth-

 私の手の中で、胸の鎖から繋がる青いベンダントの中心が十字の光できらめいた。

「――俺はまだ納得してねえからな。勝手に決めやがって」

 それを見たスレイバート様が、ゲルシュトナー城へ向かう馬車の隣席から仏頂面で呟く。

「ごめんなさい、どうしてもそうしたかったんです」

 そう言われれば、私は平謝りするしかない。

 彼がなにに不満を持っているのかというと――私が、彼に相談もせず、あの魂依りの森で出会った光の精霊とある約束をしてしまったことだ。

 すなわち――私が……母の役目を引き継ぐこと。

 それにより、光の精霊は今度は自分も力を貸してくれると、私の持つこのペンダントの中にその身を宿すこととなった。三つの精霊の力は、この先ヴェロニカと対決することになる私のことを、しっかり守ってくれるはずだ。
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