魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 そのことを確信しながらペンダントを握りしめると、私はスレイバート様に向き直った。

「図々しいお願いですが、ご説明した通り……これから私は精霊教会の巫女ヴェロニカに憑りついた、闇の精霊を倒さなければならないみたいなんです。それで、あの……」
「ひとりで行くとかふざけたことは言わねえよな?」
「…………はい」

「ん?」と。

 とてつもなく低い声と目の奥に怒りが見える笑顔で念押しされてしまえば、さすがに覚悟を決めていた私も断れない。

「とても危険なことになるかもしれませんが、いいんでしょうか?」
「バーカ、その危険に真っ先に晒されんのがお前なんだろ。だったら、俺が側にいなくてどーすんだよ」

 ふんと思いっきり鼻を鳴らすと、スレイバート様は私の肩をぐいと引き寄せた。その思いきりのいい言葉が嬉しく、私も彼に自分から身体を遠慮なくくっつける。

「しかし……道理でとんでもない魔法の力をもってやがったわけだ、マルグリットのやつは……。ただの女じゃねえとは思ったが、精霊になりかけてたなんてな。なんだか親近感を感じてきたぜ」
< 909 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop