魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 戦がないのが、領地に生きる民にとっては一番ありがたいことだと、スレイバート様は頷く。クラメーアの街も、リゾート地めいた趣があって人々の顔も明るく、とても暮らしやすい街だった。

 だが……これだけ大きな国だ。何も問題の無い領地というのもまた、存在しない。主要産業である塩づくりが好調であるとは言え、平和であるが故か領民の競争心はあまり高くなく、領地の開発意欲の乏しさが問題となっているようであった。それは特に他領と比べて魔道具技術の点で顕著となっており、そちら方面の発展が近年の課題とされているらしい。

 争いはなるべくあって欲しくないものだが、それでも、それを乗り越えよう、跳ねのけようとする人々の力が発展を後押しすることもあるのだと、複雑な気分になってしまった。

「……その辺り、俺達は領地を支え、苦境の中で努力を怠らなかった先人たちに感謝をしねーといけねーかもな。他所との戦も御免だが……さすがに同じ国のやつら同士で土地を奪い合うなんざ、バカバカしすぎるぜ」

 塩に込められた呪いが効果を発揮し始めたのもあるのかもしれないが、最近こちらでは貴族同士の小競り合いが頻発していると聞く。

 一度でも戦いの悲惨さを経験してりゃそんなことにはならねーだろうにとスレイバート様が憤るとおり、同じ土地の仲間同士でいがみ合うなんて、想像するだけで心が痛む。
< 913 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop