魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 スレイバート様は儀礼的な口調でにこやかに歩み寄ると、彼と握手をする。その後、控えていた私に彼の目が向いた。

「では、そちらが……手紙にもあった貴殿の婚約者、シルウィー嬢かな?」
「ええ、そうです。シルウィー、ご挨拶を」

 普段とは違う丁寧な口調で招き寄せられた私は、近づいてドレスの裾を摘まむと小さくお辞儀をする。

「シルウィー・ハクスリンゲンと申します。この度は王都の皇宮にも劣らぬ雅な城に入城をお許しいただき、光栄の至りです。どうか今後ともお見知りおきを」
「いやいや、お褒めいただき恐縮だ。豊かな財力だけが我が領地の自慢だからねぇ」

 ひょっとしたら、母のことで何か言われるかと思ったが……長らく戦や魔物の被害がなかったというし、この地に戻ることはほとんどなかったのだろう。母とは面識もなさそうで、彼はハクスリンゲンという家名に興味を示さなかった。

 表向きはにこやかな雰囲気ではあるが、彼の瞳からはどうも、こちらを品定めするような気配が感じられ……そしてその後興味を失ったようにふっと目を逸らされる。
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